AIの回答の3回に1回がロシア偽情報を拡散|各モデルの耐性を比較

by Synth

NewsGuardやISDの監査で、ChatGPT・Gemini・Grok・DeepSeek・Claudeがロシアの偽情報をどれだけ引用してしまうかが検証されました。約3回に1回が偽narrativeを拡散したという結果も。なぜAIが汚染されるのか「LLMグルーミング」の仕組みと、私たちが偽情報に騙されない使い方を整理します。

まず結論

  • 主要なAIチャットボットが、ウクライナ戦争などでロシア発の偽情報をどれだけ引用してしまうかを検証する監査が相次いで公表されました。NewsGuardの監査では、クレムリン系の偽narrative(作り話)を約3回に1回(約33%)の頻度で繰り返したと報告されています(France 24, 2026-06-03
  • モデルごとに差があります。比較的強かったのはGemini(「LLMではなく信頼できる情報源を確認して」と警告を添える傾向)。弱かったのはChatGPT・Grok・DeepSeekで、特にGrokはX上の親ロシア系アカウントやロシア国営メディアを引用する場面が目立ちました(ISD調査
  • 意外だったのがClaude(Anthropic)。以前は優等生だったのに、最近の監査では偽情報を引用する割合が4%→15%に悪化したと指摘されています(NewsGuard
  • 背景には「LLMグルーミング」という新しい汚染手法があります。偽情報ネットワークが大量の記事をばらまき、AIが学習・参照する情報源そのものを汚染する手口です
  • 正直に言うと、これは「どのAIが安全か」を一発で決められる話ではありません。どのモデルも完璧ではない。だからこそ、私たち側の「鵜呑みにしない使い方」が一番の防御になります

ニュース元: AI chatbot responses polluted by pro-Russian disinformation(France 24, 2026-06-03)


AIに「この戦争、どっちが正しいの?」と聞いたとき、返ってきた答えが実はプロパガンダだった——そんなことが起きうる、と聞いたら怖くないですか?

結論から言うと、これは仮の話ではありません。複数の調査機関が実際に検証し、「主要なAIがロシア発の偽情報を引用してしまう」ことを数字で示しています。今日は、その実態と、私たちにできる自衛策を整理します。

1. 何が検証されたのか:複数の監査結果

まず、最近のおもな調査を時系列で並べます。研究によって対象も手法も違うので、数字は単純比較できない点に注意してください。

調査主体時期おもな結果
NewsGuard2026年主要10チャットボットを監査。クレムリン系の偽narrativeを**約33%(3回に1回)**の頻度で繰り返した(France 24
ISD(戦略対話研究所)2026年3月ChatGPT・Gemini・Grok・DeepSeekを検証。Geminiが比較的良好、ChatGPT・Grok・DeepSeekは引用に難(ISD
Manchester大・Bern大2025年秋露骨なプロパガンダは5%、クレムリン寄りソースへのリンクは8%。多くのモデルが該当ドメインを「信頼性低」と警告し始めた(The Register

ここでのポイントは、「3割が汚染」という強い数字もあれば、「5%まで改善」という穏やかな数字もあるということ。手法(どんな質問をぶつけるか)で結果は大きく変わります。煽り見出しの数字だけを信じず、「誰が・どう測ったか」を見る癖が大切です。

2. モデル別の傾向:強かったAI、弱かったAI

ISDなどの調査から見えてきた、モデルごとのクセを整理します。あくまで特定時点・特定の検証での傾向で、各社はアップデートで挙動が変わる点を踏まえてください。

  • Gemini(Google)|比較的強い: 紛争に関する質問に対し「LLMではなく信頼できる情報源を確認して」と警告を添える傾向が確認されました。完璧ではないものの、安全側に倒す設計が効いている印象です
  • ChatGPT(OpenAI)|弱め: ISDの検証では、偽情報の影響を受けやすい側に分類されました
  • Grok(xAI)|弱め: ロシア国営メディアに加え、X上の親ロシア系インフルエンサーを引用する場面が目立ちました。Xのリアルタイム投稿を強く参照する設計が、裏目に出ている可能性があります
  • DeepSeek(中国)|不安定: 出力の振れ幅が大きく、「ほぼ問題なし」の回答もあれば「丸ごと露influence作戦に染まった」回答もある、と評されています
  • Claude(Anthropic)|最近悪化: かつては偽ソース引用が4%程度の優等生でしたが、NewsGuardの最新監査では15%まで上昇。ロシア・イラン系のプロパガンダ情報源への依存が増えたと指摘されています(NewsGuard

💡 正直な本音 「じゃあGeminiを使えば安全」と単純化したくなりますが、それは危険です。Geminiも”occasionally faltered(時々つまずいた)“と評価されています。Claudeの悪化が示すとおり、今日強いモデルが明日も強いとは限らない。ランキングを覚えるより、「どのAIも間違える前提」で使うほうが、ずっと実用的な守りになります。

3. なぜ汚染されるのか:「LLMグルーミング」の正体

一番おさえてほしいのが、この汚染の仕組みです。

NewsGuardによると、「Pravdaネットワーク」と呼ばれる親ロシアの情報網が、1つの作り話につき平均で約18,000本もの記事を量産し、150のWebサイト・46言語でばらまいていました(CEPA / France 24)。

なぜそんなに大量に? 狙いは人間の読者ではなくAIです。

AIは学習時や検索時に「同じ主張がたくさんのサイトに載っている」と、それを”よくある事実”のように扱いがちです。そこを逆手に取り、わざとネット上に偽情報をあふれさせて、AIが参照する情報源を汚染する——これが「LLMグルーミング(LLM grooming)」と呼ばれる手法です。

従来のプロパガンダ:人間に直接読ませて信じ込ませる

LLMグルーミング:AIに"事実"として学習・引用させ、
        AIの口を借りて人間に届ける

つまり、AIが「信頼できる中立な要約者」だと思われているからこそ、悪用されるわけです。これは検索エンジンのSEOスパムと似た構図ですが、相手がAIになったぶん厄介になっています。

4. 私たちにできる「騙されない使い方」

怖がらせるのが目的ではないので、対策をはっきり書きます。難しいことはありません。

  1. 政治・紛争・歴史の”真偽”はAIに最終判断させない: 「どっちが正しい?」のような問いは、AIが最も汚染されやすい領域です。AIは”論点整理”までにとどめ、判断は一次情報で
  2. 出典(ソース)を必ず開く: AIが示したリンクを実際に踏み、国営メディアや聞いたことのないサイトでないかを確認する。ドメイン名を見る癖をつけましょう
  3. 複数のAIに同じ質問をぶつける: 1つのモデルに頼らず、ChatGPT・Gemini・Claudeなどで答えを突き合わせる。食い違えば「要注意トピック」のサインです
  4. 「警告を出すAI」をむしろ評価する: 「信頼できる情報源を確認してください」と添えるのは、賢いふりをしない誠実さ。煮え切らない回答を嫌わないでください
  5. 日付と固有名詞を疑う: 統計・死者数・発言などの”鮮度命の数字”は、必ず報道機関の一次情報で裏を取る

自衛のしやすさ(筆者の実感): ★★★★☆

正直、コツさえ知っていれば防げる話です。一番こわいのは「AIが言ったから本当だろう」と検証を省くこと。AIを”賢い検索”ではなく”よくできた下書き”だと思う——それだけで騙される確率はぐっと下がります。

あなたへの影響

「ウクライナ戦争のプロパガンダなんて、自分の日常には関係ない」と思いましたか? でも、この問題の本質は**「AIは、もっともらしい嘘を自信満々に語ることがある」**という点にあります。これは戦争に限った話ではありません。

  • 仕事のリサーチ: 市場データや競合情報をAIにまとめさせるとき、汚染された情報源を引いていないか。提出資料に偽statが混じれば、あなたの信用問題になります
  • 健康・お金の判断: 医療や投資の情報も、偽サイトが大量生産しやすい領域。AIの回答を鵜呑みにして判断するのは危険です
  • 子ども・家族のAI利用: 検証スキルのない人ほど、AIの”自信”に飲まれやすい。家庭内で「AIは間違えることがある」を共有しておくだけで守りになります
  • あなたが発信する側なら: AIにまとめさせた内容をそのままSNSや記事に出すと、気づかぬうちに偽情報の拡散者になってしまう。一次情報のチェックは、自分を守る行為でもあります

要は、AIを使う人全員に関わる「情報リテラシー」の話なんです。

まとめ

  • 複数の監査で、主要AIがロシア発の偽情報を引用する実態が判明。NewsGuardの監査では約3回に1回という結果も
  • 傾向としてGeminiは比較的強く、ChatGPT・Grok・DeepSeekは弱め。優等生だったClaudeも最近は悪化(4%→15%)
  • 原因は「LLMグルーミング」——AIが参照する情報源を、偽情報を大量生産して汚染する手口
  • 完璧なモデルはない。出典確認・複数AIの突き合わせ・一次情報での裏取りが最大の防御
  • これは戦争の話にとどまらず、AIを使う全員の情報リテラシーの問題

AIは便利ですが、「自信のある嘘」を見抜けるのは結局あなた自身です。一手間の検証を惜しまないこと——それが2026年のAIとの賢い付き合い方だと思います。

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参考にしたソース

ーー Synth

ヘッダー画像: Photo by Joshua Miranda on Pexels

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Synth

explAInのライター。AIの今をやさしく、忖度なしで。