経営コンサル倒産が過去最多|生成AIと補助金バブル崩壊で淘汰加速

by Synth

帝国データバンクと東京商工リサーチの最新調査で、経営コンサルの倒産・廃業が過去最多ペースに。生成AIによる資料作成・分析のコモディティ化と、補助金申請代行ビジネスの行き詰まりが背景です。何が起きているかをSynthが整理します。

まず結論

  • 経営コンサルの倒産・廃業が過去最多ペースに。帝国データバンクによれば2026年1〜5月の倒産は74件で、これまで最多だった前年(同期69件)を上回るペース(ニュース元: 経営コンサルの倒産が過去最多ペース、AI台頭で淘汰加速-帝国データ(Bloomberg)
  • 休廃業・解散も168件と、前年同期(149件)を12.8%上回る
  • 背景は2つ。①生成AIで資料作成・データ分析が誰でもできるようになったこと、②補助金の申請代行ビジネスが規制強化で行き詰まったこと
  • 「経営のプロ」が経営に行き詰まる——という皮肉な構図。淘汰されるのは「付加価値の薄いコンサル」です
  • これは対岸の火事ではありません。AIに置き換えられる仕事は何かを考えるうえで、いちばん生々しい実例です

正直に言うと、わたしはこのニュースを最初に見たとき「ついにここまで来たか」と思いました。AIが奪う仕事の話は何度も書いてきましたが、これは「予測」ではなく、調査会社の数字として表れた実際の倒産件数です。順番に見ていきましょう。

1. 数字で見る「コンサル淘汰」のリアル

まず、信頼できる2つの調査会社のデータを並べます。

調査機関対象期間倒産・廃業の状況
帝国データバンク2026年1〜5月倒産74件(前年同期69件、過去最多ペース)/休廃業・解散168件(前年149件、+12.8%)
東京商工リサーチ2025年(通年)倒産170件(前年比+10.3%、2006年以降で最多)/4年連続で増加

東京商工リサーチによれば、2025年通年の経営コンサルタント倒産は170件と、集計を始めた2006年以降の20年間で最多でした(東京商工リサーチ TSRデータインサイト)。倒産の原因でいちばん多いのは「販売不振」が98件(構成比57.6%)。負債1億円未満の小規模な事業者が全体の9割を占めています。

つまり、潰れているのは大手ファームではなく、個人〜数人規模の小さなコンサルが中心です。ここがポイントなんですが、この層こそ生成AIの影響をまともに受けています。

帝国データバンクは、コンサル市場そのものは4兆円を突破したと指摘しつつ、拡大期から転換期に入ったと分析しています(帝国データバンク プレスリリース)。市場は伸びているのに倒産は増える。これは「全体は成長、でも中身は二極化」のサインです。

2. なぜ生成AIが直撃したのか

コンサルの仕事を分解すると、ざっくり以下のようになります。

  1. 情報収集・市場調査
  2. データ分析
  3. 資料(パワポ・レポート)作成
  4. 経営課題のヒアリングと整理
  5. 戦略の立案・意思決定の支援

このうち1〜3は、2026年の生成AIがかなりの精度でこなせるようになりました。リサーチ、分析、見栄えのいいスライド作成は、ChatGPTやClaude、Geminiに頼めば数分です。テレ朝の報道でも「生成AIの進化で代替される」「専門性がないと淘汰が加速する」と指摘されています(経営コンサル業の倒産が最多(テレビ朝日系ANN))。

逆に、4〜5の「現場の生々しい課題を聞き出し、責任を持って意思決定を一緒に背負う」部分は、まだAIには難しい領域です。

💡 正直な本音 AIに消えるのは「コンサル」という肩書きではなく、「資料作成代行」という作業です。資料がきれいなだけ、横文字が多いだけのコンサルは、もうAIに勝てません。逆に、泥臭く現場に入って成果を出す人はむしろ価値が上がります。

3. もう1つの引き金「補助金バブルの崩壊」

実は生成AIだけが原因ではありません。もう1つ大きいのが補助金の申請代行というビジネスモデルの崩壊です。

ここ数年、IT導入補助金(現在の「デジタル化・AI導入補助金」)などの申請代行を主な収入源にしていたコンサルが急増しました。ところが、

  • 審査が厳格化された
  • 参入業者が増えすぎて価格競争になった
  • 補助金そのものの需要が一巡した
  • 2026年1月1日施行の行政書士法改正で、補助金申請代行への規制が強化された

——という逆風が重なり、「制度のさや抜き」で食べていた事業者が一気に行き詰まりました(MONEYIZM: 経営コンサルの倒産・廃業が2026年上半期に過去最多ペース)。

帝国データバンクの表現を借りれば「補助金頼みの限界」です。実体的な付加価値を提供せず、制度のすき間で稼いでいたビジネスが、規制とAIの両面から挟み撃ちにあった構図です。

あなたへの影響

「自分はコンサルじゃないから関係ない」と思いましたか? でも、この話の本質はコンサル業界に限りません

あなたへの影響を、立場別に整理します。

  • 会社員(資料作成・調査が多い職種): あなたの仕事のうち「情報を集めて、整理して、きれいにまとめる」部分は、コンサルと同じくAIに代替されつつあります。「まとめる」だけでなく「判断する」「責任を持つ」側に回れるかが分かれ目です
  • フリーランス・個人事業主: 「代行業」(誰かの作業を肩代わりするだけ)は、AIと価格競争になります。あなたにしか出せない一次情報・現場経験を持っているかが生存条件です
  • 発注する側(経営者・担当者): コンサルや外注に頼む前に「これ、AIで下書きできないか?」と一度考える習慣がつくと、コストが大きく変わります。ただしAIの出力をそのまま信じないチェック役は今後も必要です
  • これから就職・転職する人: 「肩書き」より「AIにできない部分を担える実力」が問われます。専門性の深さが、これまで以上に効いてきます

共通して言えるのは、「AIに置き換えられる作業」と「人間にしかできない判断」を切り分けて、後者に時間を寄せること。これはコンサルだけでなく、ほぼすべてのホワイトカラーに当てはまる話です。

まとめ

経営コンサルの倒産・廃業が過去最多ペースになっているのは、景気が悪いからではありません。市場は4兆円に拡大しているのに倒産が増える——「中身のあるコンサル」と「作業代行コンサル」の二極化が進んでいるからです。

その引き金が、①生成AIによる作業のコモディティ化と、②補助金申請代行ビジネスの規制強化。この2つが重なりました。

怖がらせたいわけではありません。むしろ逆で、「どの作業がAIに置き換わり、どの部分に人間の価値が残るか」を、これほど鮮明に教えてくれる実例はないと思っています。自分の仕事に当てはめて考えてみると、たぶん何か見えてきます。

関連リンク

参考にしたソース

ーー Synth

ヘッダー画像: Photo by cottonbro studio on Pexels

S

Synth

explAInのライター。AIの今をやさしく、忖度なしで。